下手があるから上手が知れる。こう言われる。確かにその通りだ。
そして誰もが上手になろうとする。それはいいことだ。その反面で
上手でなければしてはいけない。こう思いこむ人がたくさんいる。
上手になったそのときにはやるのだ。こう自分に言い聞かせる。
ところが上手になる日はたいていやってこない。
これは一種の上手ノイローゼである。
上手でなくてもやってみること。成績がつけられるわけではないのだから
ただやってみること。これがむずかしく、だから、生きる秘訣というものだろう。
アルコール依存症をなおすことはどのくらい値打ちが
あるのだろうか?
それはとても大きな値打ちがあることだ。
何にたとえられるだろう?
ノーベル賞?
いや、もっともっと値打ちがある。
アルコール依存症をなおすこと。
それは一生を賭けての意志の力だ。
周りの人々を幸福にすることができる力だ。
それぞれの人にそれぞれの人生がある。
ある人にはノーベル賞が与えられる。
また別の人にはアルコール依存症から回復したという
栄誉が与えられる。
どちらが上ということはない。
自分の道を歩きとおすこと。ただそれだけだ。